美容師が指名客を引き継いで退職するには|予約・カルテ・挨拶の整理

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美容師が指名客を引き継いで退職するには|予約・カルテ・挨拶の整理

指名客がいても辞められる?引き継ぎは何をすればいい?

辞められます。引き継ぎは「予約の一覧を店に渡す」「カルテの注意点を店のシステムに書き残す」「挨拶は店が認めた方法で行う」の3つです。 雇用されている美容師で契約期間の定めがなければ、退職の申入れから原則2週間で雇用が終わります(民法627条)。指名客がいることは、退職できるかどうかには関係しません。

引き継ぎで避けたいのは、お客様の連絡先やカルテを私用スマホに移すこと、店の顧客情報を使って次の店へ誘うことです。理由は後の「カルテ」の節で説明します。

全体の流れは次のとおりです(編集部の目安)。

退職日までの時期やること
退職を伝えた直後退職日以降の予約を一覧にし、担当変更を誰が伝えるか店長と決める
退職を伝えてから最終出勤まで担当中のお客様のカルテに、配合や注意点を追記する
最終出勤までの来店時店が認めた方法で、お客様に挨拶する
最終出勤日私用端末に店の情報が残っていないか確認し、貸与品を返す

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予約の引き継ぎ:先の予約はどう渡す?

退職日以降に入っている予約を、店の予約システムから一覧にして店長に渡します。 次の担当者が決まっていなくても、一覧があれば店が振り分けられます。

  1. 予約システムで、退職日の翌日以降に自分の名前で入っている予約を抽出する
  2. 予約ごとに、来店日・時間・メニュー・所要時間を一覧にする
  3. 指名の理由になっている点(カットの癖、会話の好みなど)を一言添える
  4. 担当変更をお客様に伝えるのが店なのか自分なのかを、店長と決める
  5. 自分が伝える場合は、店の電話やアカウントなど、店が認めた手段を使う

一覧は次のような書式で作ると、次の担当者が使いやすくなります(編集部の書式例)。

来店予定日予約番号メニュー引き継ぎで伝えたいこと
〇月〇日 14:00〇〇〇カット・カラー前回の配合はカルテ参照。根元のリタッチ希望
〇月〇日 11:00〇〇〇縮毛矯正毛先のダメージあり。薬剤の放置時間に注意

お客様の氏名や電話番号は一覧に書き写さず、予約番号で特定します。一覧そのものが顧客情報になるため、店の業務用の手段で渡してください。

カルテの引き継ぎ:何を書き残す?持ち出してはいけない理由は?

施術の判断に必要なことを、店のカルテに書き足します。 自分のノートや頭の中にしかない情報を、次の担当者が読める形にするのが目的です。

  1. 薬剤の配合、放置時間、前回の仕上がりの評価
  2. 髪質、ダメージの部位、クセの出方
  3. 頭皮のトラブルや、薬剤でかぶれた経験の有無
  4. 好み・苦手(長さの許容範囲、会話の量など)
  5. 次回に提案しようとしていたメニュー

お客様の氏名・連絡先・来店履歴は、店(事業者)が管理する顧客情報です。個人情報保護法は、事業者に従業者の監督を求めています(24条)。さらに、事業者の従業者や従業者だった人が、業務で扱った個人情報データベース等を自分や第三者の不正な利益を図る目的で提供したり盗用したりすると、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります(179条)。

次の表は編集部の目安です。

してよいこと避けたいこと
店のカルテシステムに配合や注意点を追記するカルテや顧客一覧を撮影して私用スマホに保存する
店の電話・アカウントで担当変更を伝える店の予約システムの連絡先から個人的に連絡する
自分の技術や得意メニューを経歴として話す店の顧客リストを次の店や独立後の集客に使う

退職前に、私用スマホのLINE・写真・メモに店の顧客情報が残っていないかを確認し、消した日付を控えておくと、後で説明を求められたときに役立ちます。

根拠:個人情報保護法24条・179条。秘密として管理されている顧客名簿は、不正競争防止法の「営業秘密」に当たる可能性もあります(同法2条6項)。

挨拶:お客様に退職をどう伝える?

最終出勤までに来店するお客様には、在職中は店の方針に沿って、施術中に口頭で伝えるのが無難です(編集部の目安)。 来店予定のないお客様への告知は、店の公式アカウントやお知らせで店から行ってもらうよう相談します。

以下は編集部が作成した挨拶の例です。

「〇月末で、こちらのお店を退職することになりました。これまでありがとうございました。次回からは〇〇が担当します。今日の配合と、気にされていた点はカルテに残しておきますね。」

移籍先の店名を伝えてよいかは、誓約書や店との取り決めによります。分からない場合は、退職を伝えるときに店長へ確認しておきます。個人のSNSで退職を報告する場合も、店のアカウントのフォロワーに向けた勧誘にならない書き方にします。

業務委託・面貸しで働いている場合は?

業務委託や面貸しの契約で働いている場合は、雇用契約を前提にした上の説明をそのまま当てはめず、まず契約書の解約条項(何日前に申し出るか)を確認します。契約が委任・準委任に当たる場合、民法651条により各当事者はいつでも解除できますが、相手に不利な時期に解除すると、やむを得ない事由がない限り損害賠償の対象になり得ます(準委任は同656条で準用)。なお、契約の名前が業務委託でも、働き方の実態によっては労働者と判断されることがあります。迷う場合は労働基準監督署や弁護士に相談してください。

顧客情報をどちらが管理するか、退店後の顧客への連絡をどう扱うかも、契約書の定めを確認してください。独立やフリーランスとしての退店の準備は、美容師がフリーランス・独立を視野に退職するときで詳しく扱っています。

オーナーに直接言えない・退職代行に相談する前に確認すること(有給・貸与品・費用)

退職を伝えるのが怖い場合も、次のことは自分で整理できます。

  1. 退職希望日と、有給休暇の残日数(雇用されていて6か月以上継続勤務し、出勤率8割以上なら付与の対象。労働基準法39条)
  2. 店の鍵、制服、店から借りている道具と、店に置いている私物(シザーなど)
  3. 予約の一覧とカルテの追記がどこまで済んでいるか
  4. 離職票・源泉徴収票などの書類の送付先
  5. 講習費の返還や罰金を求められているかどうか

5のように金銭を請求されている場合、違約金や損害賠償額をあらかじめ定める契約は労働基準法16条で禁じられています。ただし個別の事情で判断が分かれるため、書面で請求されたら弁護士に相談してください。オーナーへの切り出し方は美容室のオーナーが怖くて辞めたいとき、退職代行の選び方は美容師の退職代行ガイドにまとめています。退職代行の料金や対応範囲はサービスごとに異なるため、依頼前に公式サイトで最新の内容を確認してください。

参考にした公的情報

本記事では、制度・法令に関わる説明について以下の一次情報を参照しています。個別の判断が必要な場合は、各窓口または専門家へ確認してください。

よくある質問

Q.指名のお客様から「次のお店を教えて」と聞かれたら、答えていいですか?
A.まず退職時の誓約書や就業規則に、顧客への勧誘や移籍先の告知を制限する条項があるかを確認します。条項がなく店のルールにも反しない範囲でも、店の予約システムやカルテの連絡先を使って自分から連絡するのは避けてください。判断に迷う場合は、退職前に店長か弁護士に確認しておきます。
Q.自分で撮ったお客様のビフォーアフター写真は、退職後も個人のSNSに載せていいですか?
A.写真に写っているのはお客様なので、掲載はお客様が同意した範囲と店の規則に沿う必要があります。店のアカウント用に撮った写真を個人アカウントへ転載する場合は、店とお客様の両方に確認してから載せます。
Q.もう出勤できません。予約やカルテの引き継ぎはどうすればいいですか?
A.出勤できなくても、予約の一覧とカルテの注意点だけは店長へ送れます。そのとき、顧客の電話番号や住所は書き写さず、予約番号や来店日、カルテ番号で特定してください。店の業務用の連絡手段で送り、送信記録を残します。
Q.退職後に「顧客を引き抜いた」と言われたらどうすればいいですか?
A.言われた日時と内容を記録し、その場で謝罪文や念書に署名しないでください。自分が店の顧客情報をどう扱ったか(持ち出していないこと)を説明できるよう、退職時に私用端末から店の情報を消した日付も控えておきます。請求や警告が書面で届いたら弁護士に相談します。

まとめ

指名客がいても退職できます。引き継ぎは、退職日以降の予約を一覧にして店に渡す、カルテの注意点を店のシステムに書き残す、挨拶は店が認めた方法で行う、の3つです。顧客の連絡先を私用スマホに移すことや、店の顧客情報で次の店へ誘うことは避けます。

GUIDE 04 / 美容師

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