教員が結婚・出産・育児を機に退職したいとき|自分を責めない整理
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出産・育児で辞めるなら、産休・育休の前と後どちらがいい?
体調と職場が許すなら、産休・育休を取ってから退職を決めても遅くありません。 産前は出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から請求すれば休め、産後8週間は原則として働けません(労働基準法65条)。育児休業は、公立校の正規教員なら子が3歳に達する日まで(地方公務員の育児休業等に関する法律2条)、私立校なら原則1歳まで(育児・介護休業法5条)取れます。
ただし私立校で、育休を始める時点ですでに退職を予定している場合は、雇用保険の育児休業給付の対象になりません。一方、受給資格の確認後に退職を決めた場合は、退職日まで支給の対象になると厚生労働省は案内しています(令和7年4月1日以後の退職)。「辞めるつもりで休業を取る」のと「休業中に考えた結果、辞める」のは扱いが違う、と覚えておいてください。
根拠:労働基準法65条、地方公務員の育児休業等に関する法律2条、育児・介護休業法5条、厚生労働省「育児休業等給付について」Q50・Q51
公立と私立で、使える制度はどう違う?
| 項目 | 公立校(正規教員) | 私立校 |
|---|---|---|
| 産前産後休業 | 労働基準法65条(地方公務員法58条3項の適用除外に含まれない) | 労働基準法65条 |
| 育児休業の期間 | 子が3歳に達する日まで。任命権者は、業務を処理する措置が著しく困難な場合を除き承認しなければならない | 原則1歳まで。雇用の継続のために特に必要な場合などの条件を満たせば1歳6か月・2歳まで |
| 不利益な扱いの禁止 | 育児休業を理由とする不利益な取扱いの禁止(地方公務員の育児休業等に関する法律9条) | 妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(男女雇用機会均等法9条3項)、育休の申出等を理由とする不利益な取扱いの禁止(育児・介護休業法10条) |
| 休業中のお金 | 加入している共済組合で確認 | 雇用保険の育児休業給付、加入先の健康保険・共済の出産手当金 |
| 退職後の失業手当 | 雇用保険の対象外とされるのが一般的(雇用保険法6条6号)。退職手当を確認 | 妊娠・出産・育児で30日以上働けないときは受給期間を延長できる(最長3年) |
公立校の教員が不利益な扱いを受けたと感じたときは、人事委員会・公平委員会への措置要求(地方公務員法46条)や弁護士への相談を考えます。
根拠:地方公務員法46条・58条、男女雇用機会均等法9条・38条、育児・介護休業法10条、地方公務員の育児休業等に関する法律9条
結婚を機に辞めるときに確認すること
結婚そのものは、退職の時期を縛る理由になりません。辞めるかどうか、いつ辞めるかは本人が決められます。確認したいのは次の3点です。
- 私立校:結婚を理由に辞めさせる扱いは禁止されている。 男女雇用機会均等法9条は、事業主が女性労働者の婚姻・妊娠・出産を退職理由として予定する定めをすること(1項)と、婚姻を理由として解雇すること(2項)を禁止しています。「結婚したら辞める決まり」と言われた場合は、発言の日時と相手を記録し、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。
- 公立校:均等法9条は適用されない。 同法38条で9条を含む節は地方公務員に適用されません。公立校の職員は、法律で定める事由による場合でなければ意に反して免職されないとされています(地方公務員法27条2項)。
- 結婚に伴う転居で辞めるなら、失業手当の扱いを確認する。 私立校で雇用保険に加入していた場合、結婚に伴う住所の変更で通勤が不可能または困難になった離職は、ハローワークが示す特定理由離職者の範囲に含まれています。公立校の正規教員は雇用保険の対象外とされるのが一般的なので、退職手当の見込みを事務職員に確認します。
根拠:男女雇用機会均等法9条、地方公務員法27条、ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」
退職日を決める前に確認すること
退職日は「いつ学校を離れるか」だけでなく、受け取れるお金を左右します。次の順で確認してください。
- 産前休業の開始日を数える。 出産予定日の42日前(多胎妊娠は98日前)から休業を請求できます。体調が悪ければ、それより前は病気休暇や医師の指示に沿った配慮を相談します。
- 出産手当金の条件を確かめる。 公立校は公立学校共済組合、私立校は加入先(私学共済または健康保険)の規定で確認します。健康保険の出産手当金は、出産日以前42日から出産後56日までのうち働かなかった期間が対象です(健康保険法102条)。退職後も受け取るには、退職日まで続けて1年以上加入し、退職日(資格喪失日の前日)に支給を受けているか、受けられる状態であることが条件です(同法104条)。
- 育休を取るかを決める。 私立校は、育休開始時点で退職予定なら育児休業給付の対象外です(冒頭の節を参照)。
- 退職後の健康保険を選ぶ。 配偶者の扶養に入る、加入先の任意継続を使う、国民健康保険に入る、のいずれかになります。比べ方は退職後の健康保険で確認できます。
- 私立校なら失業手当の受給期間延長を申請する。 出産・育児ですぐに働けない場合、ハローワークで受給期間を延長でき、延長できる期間は最長3年です。
根拠:健康保険法102条・104条、ハローワーク「基本手当について」
管理職へは、どの順番で相談する?
- 医師に、勤務で避けるべきこと(長時間の立ち仕事、部活動の引率など)を確認する。
- 校長に、妊娠と出産予定日、配慮してほしい業務を伝える。妊娠中は、請求すれば軽易な業務への転換を求められます(労働基準法65条3項)。
- 事務職員に、産休・育休・手当の手続きと必要書類を聞く。「休業した場合」と「退職した場合」の両方を聞くのがポイントです。
- 家族と、休業後に復帰するか、退職するかを話し合う。
- 退職を決めたら、退職日を書いた退職願を書面で出す。
校長への伝え方の文例
〇月〇日が出産予定日です。医師からは〇〇を控えるように言われています。産前休業は〇月〇日から取りたいと考えています。その後の復帰か退職かは、手当の条件を確認したうえで〇月中にお伝えします。
退職を決めている場合は、最後の一文を「〇月〇日付で退職したいと考えています。退職願の様式と提出先を教えてください」に置き換えます。
担任・部活動・保護者対応はどう引き継ぐ?
産休に入る場合も退職する場合も、引き継ぎの中身は同じです。配慮が必要な児童生徒、授業の進度、未処理の成績、保護者との約束、返却物の5点をメモにまとめます。項目の並べ方は担任を途中で退職するときの引き継ぎメモを使えます。
- 部活動:大会の引率や休日練習を妊娠中に続けられない場合は、顧問の交代や副顧問への分担を校長に相談します。
- 保護者対応:休業や退職を保護者にどう伝えるかは、学校として校長が決めます。自分から個別に連絡を始めないと、説明の内容が食い違いにくくなります。
年度途中に休業・退職しても大丈夫?
年度の区切りを待つ義務はありません。産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から本人の請求で始まり、産後8週間は原則として働けないため、休業の時期は年度ではなく出産予定日で決まります(労働基準法65条)。育児休業も、公立校は任命権者への請求、私立校は事業主への申出で取るもので、年度末に合わせる決まりはありません。
退職日も同じで、私立校は就業規則と民法627条、公立校は自治体の規則に沿って希望日を書面で伝えます。「年度末まで待ってほしい」と言われても、希望日を変えるかは本人が決められます。伝えた日と相手は記録しておきます。
自分で言えないとき、退職代行は使える?
使えますが、公立と私立で選び方が変わります。公立校の教員(一般職の地方公務員)には労働組合法が原則として適用されないため(地方公務員法58条1項)、労働組合型の団体交渉は前提になりません。退職の連絡を第三者に任せたい場合は、弁護士型を中心に検討します。候補は弁護士型の退職代行一覧で比べられます。
私立校で「妊娠したなら辞めてほしい」と促されている場合は、退職代行で退職を急ぐ前に、その発言の記録を残して都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談する方が、休業や手当を守れる可能性があります。
根拠:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」、都道府県労働局の所在地一覧
伝えることと、伝えなくてよいことを分ける
学校への申し訳なさが強いと、家庭の事情まで細かく説明しがちです。判断に必要な情報だけを出せば足ります。
| 学校に伝えること | 伝えなくてよいこと |
|---|---|
| 出産予定日、医師から控えるよう言われた業務 | 家族計画や、次の子どもの予定 |
| 産前休業・育休・退職の希望日 | 配偶者の職業や収入 |
| 引き継ぎメモを渡す日 | 退職後に働くかどうかの詳しい予定 |
| 書類の送付先 | 退職を決めた気持ちの経緯 |
退職後に講師や別の働き方で教育に関わりたい場合は、復職・復帰が不安な教員も参考にしてください。
参考にした公的情報
本記事では、制度・法令に関わる説明について以下の一次情報を参照しています。個別の判断が必要な場合は、各窓口または専門家へ確認してください。
- 労働基準法65条(e-Gov法令検索) 産前6週間(多胎14週間)・産後8週間の休業、妊娠中の軽易な業務への転換。
- 地方公務員の育児休業等に関する法律(e-Gov法令検索) 子が3歳に達する日までの育児休業(2条)と不利益取扱いの禁止(9条)。
- 育児・介護休業法(e-Gov法令検索) 原則1歳までの育児休業(5条)と不利益取扱いの禁止(10条)。
- 男女雇用機会均等法(e-Gov法令検索) 婚姻・妊娠・出産等を理由とする扱いの禁止(9条)と公務員への適用除外(38条)。
よくある質問
Q.育休中に退職を決めたら、受け取った育児休業給付を返す必要はありますか?
Q.妊娠を伝えたら「年度末で辞めてほしい」と遠回しに言われました。
Q.退職願を出した後で、やはり育休を取ってから考えたくなりました。撤回できますか?
Q.産休に入る前に退職すると、出産手当金は受け取れませんか?
Q.辞めずに、短い時間で働き続ける制度はありますか?
まとめ
出産・育児で退職を考える教員は、産休・育休を取ってから決める道と、休業前に辞める道を比べてから選べます。公立は子が3歳まで、私立は原則1歳まで育休があり、退職の時期で受け取れる手当が変わります。
GUIDE 04 / 教員
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